トラブル回避Q&A(1)

印刷トラブル回避Q&Aとは?

印刷物ができるまでの工程の中で注意すべきポイントや、過去にあったトラブルへの対策など、CIでは、こうした内容をまとめた小冊子を「トラブル回避Q&A」と題して2014年・2018年に発行しました。

この冊子を今年リニューアルする予定です。CIブログではリニューアル途中の記事から不定期に発信していきます。

2018年発行の小冊子

今回はこのリニューアルに合わせて初めて掲載予定の記事「金・銀・パール系インキを使った色校正におけるデータ作成の注意点」を取り上げます。

金・銀・パール系インキの特性

金・銀・パール系インキとは、DIC619、620、621などに代表される、光沢感のある不透明なインキです。

使い古された広研のDICカラーチップ

プロセスカラーインキ(CMYK)よりも不透明で、上から乗せると下のインキ(色)を覆い隠してしまいます。
また、上から他のインキ(色)を重ねようとしてもうまく乗らないという特性もあります。

トラッピング

下のインキが透けて見えないインキなので、金・銀・パール系インキに対してはオーバープリント(ノセ)を設定しても(Illustratorなどでの画面上では見えても)刷り上がりが画面上とは異なる結果になることがあります。また、上から他のインキもうまく乗らないという性質から、他の色をオーバープリントで乗せることも難しいです。
ですので、すべて抜き合わせにし、適宜トラッピングトラップ処理)を行う必要があります。

適切にトラッピングしないと、スミ文字がうまく乗らなかったり、版ずれが起きて白が見えたりします

チョーク? スプレッド?

では、用いるトラッピングはチョークトラップがいいのか、スプレッドトラップがいいのか?
実は刷る版の順番や色の濃淡によってトラッピング手法を変える必要があります。

以下、スミ+金の2色で刷る場合を考えてみましょう。

  • 金を先に刷る場合:金で刷る側を太らせ、太らせた部分にオーバープリントをかけます。印刷的には上から穴を開けたスミを被せるイメージです。なので先に刷る金を少し大きくしておきます。
  • スミを先に刷る場合:スミを(金の内側へ)食い込ませ、その部分にオーバープリントをかけます。印刷的には穴の空いた状態のスミに上から金で蓋をするイメージです。なので先に刷るスミを大きくしておきます。
刷り上がりのイメージ
背景のスミを薄くしてみるとこんな感じ。スミを食い込ませている右側の文字が少し痩せて見えますが、実際には上から金を被せるので前図の刷り上がりイメージのようになります

これは背景をグレーにした模式図です。
金を先に刷る場合、金を太らせます。太さは特に決まっていませんが、弊社ではトンボの半分程度太らせることにしています。

一方、こちらはスミを先に刷る場合です。背景を水色にして分かりやすくしました。
金を太らせてしまうと、太ったまま刷り上がってしまいます。スミを先に刷る場合は(金の太さを変えず)背景になるスミのほうを金に食い込ませるように刷る必要があるのです。

余談:金・銀インキを鮮やかに見せる方法

金・銀インキを使用する際、金インキの下地にイエローの平網、銀インキの下地にはスミの平網を引くことで、金・銀をより鮮やかに見せることができます。

まとめ

  • 金・銀・パール系のインキを使う場合、適切にトラッピングする必要がある(単純にオーバープリントできない)
  • 刷り順や色の濃淡によってトラッピングを変える必要がある
  • 刷り上がりをイメージしながらデータを作る

※記載している情報はあくまで弊社製版部でのノウハウです。実際の色校正に当たっては、必ず色校業者さんにご確認ください

以上のように、金・銀・パール系インキを使った印刷物は印刷条件・DTPデータの設定によっては意図しない印刷結果となることがありますので注意が必要です。

弊社ではこのように印刷品質まで考慮した製版作業を心がけています。ご不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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